2001年1月のお話
片うでがない男(ボルネオ)「オリオン座」
冬といえば先月の「おうし座」と同様に有名な星座といえば、「オリオン座」でしょう。
この星座もかなり目立つ星座で、世界のあちこちにお話があるようです。
今月は、ボルネオ島の原住民族に伝わるお話をしましょう。
ボルネオのダイヤ族では、オリオンは片うでのない若者とされています。
ラファーンという名で、天の米倉の星(バライ、ベガサスの大方形)の
娘に慕われて空へ昇って行き、夫婦となるのを許されました。
ところが天上の習わしは、人間の世界とは色々と違っていて、
妻はそれをいちいち教えるのですが、ラファーンは聞くはしから忘れてしまいました。
初めの晩の酒盛りにも、ご飯は一粒ずつ針でさして食べなければならないのに、
つい手づかみで口に入れてしまい、妻と、しゅうとのバライを失望させました。
翌日から、ラファーンは山へいって、木を倒す仕事を云いつけられました。
妻は、「天の木は、その根のところへ、斧の刃を向けておくだけで、ひとりでに倒れます。
決して、斧を打ちこんではいけません」と、くり返し教えて仕事に行かせました。
しかし、ラファーンはまたそれを忘れてしまい、やり慣れているように、
斧を打ちこんでしまった、1本も倒れませんでした。
3日目に、しゅうとのバライが一緒に行き、「こうして倒すのだ」と、やりかたを教えました。
初めはそれを守っていましたが、また、いつの間にか、斧を振り下ろしていました。
それでとうとう、天上のおきてを破ったむくいで、バライが近くで倒した大木が、
ラファーンの方へ倒れてきて、左の肩にあたり、腕をもぎ取ってしまいました。
これでラファーンは、すっかりおびえてしまい、赤子をかかえた妻が、
泣く泣く伸ばしてくれた豆のつるにつかまって、人間の世界へ帰って行きました。
そして、死んでから空にのぼって、この星座になりましたが、今でも左うでがないといわれています。
この「オリオン」というのは、勇猛果敢な狩人というイメージと、
どこか、間抜けな力だけが強い男という2面性を持っているようです。
まぁ、多かれ少なかれ、ヒトにはそういうところがあるという事でしょうか・・・・・。
冬の夜空に、はっきりとわかるその姿が、色々な話を生んだのでしょう。