2000年12月のお話
悲しきイオ(ギリシャ)「おうし座」
冬になるとこの「おうし座」のお話になってしまうようです。
それだけよく目立つ星座ということでしょう。
この牛は、河の神のイナコスの美しい娘イオのことです。
ある日川辺で、大神ゼウスとたわむれていたところを
后へーラ女神が見つけて、オリンポスから下りて来ました。
大神ゼウスは慌てて空をかきくもらせ、イオ雌牛の子の姿に変えてかくしました。
しかし、ヘーラの嫉妬深い目は、その牛を怪しいとにらんで、
むりやりに夫ゼウスからゆずり受け、百も目のある怪人アルゴスを番につけて、
昼も夜もイオを苦しめました。
父や姉妹がそばへ来ても、イオは牛の声で、あわれみを乞うほかはなかったのです。
それでも、ようやくの思いで、つので砂地に「IO」(イオ)と書いてみせました。
父イナコスは、初めて娘イオの変わり果てた姿と知り、牛の首を抱いてなげきましたが、
たちまち、怪人アルゴズに追いたてられてしまいました。
そこで大神ゼウスはへルメス神にいいつけて、よしの笛シュリンクスを吹かして
怪人アルゴスの百の目を眠らせ、首を切らせました。
しかし、執念深い深いヘーラは、一匹の大あぶを放って、雌牛となったイオを苦しめたので、
イオは大あぶに追われて海を泳いで逃げていきました。
現在、イオニアの海というのが、このことにちなんだ名前だということです。
それからもイオの雌牛は、あちこちと逃げまわって、トラキアの海峡を渡り、
ここにもボスフォロス(牛のかち渡り)という名をのこしました。
そして、最後にエジプトにたどりついたところで、ヘーラ女神の怒りもようやくとけて、
イオはもとの姿になり、そこの王妃となって幸福な一生をおくったということです。
木星の第一衛星にイオの別名があるのは、
木星(ジュビター)がギリシャのゼウスに当ることから銘々されたということです。