2000年10月のお話
片目をつぶした僧(インド)「金星」
インドの古代神話では、金星は男の神シュクラで、その光と色から、「十六の光を持つ神」、
また「白い神」とも呼ばれていました。
シュクラは僧侶でもあり、善王バリの師でした。インドの神々は徳行の高い人間をきらったので、
ある時、ヴィシュヌが小びとの姿でバリの前に現われ、施し物を乞いました。
シュクラは、それが王の身を亡ぼすたくらみであることを知り、
何も施さないようにかたく戒めましたが、王はシュクラの言葉を聞かずに、僧たちに経文を読ませ、
水を注いで、施しをさせようとしました。
そこでシュクラは、身を変じて器の中に隠れ、呪文をとなえて水が流れでないようにしました。
しかし、ヴィシュヌは早くもその事を知って、器の中にひとすじの「わら」を投げ込みました。
投げ込まれた「わら」は、シュクラの目にあたり、痛さのあまり器からとび出したので、
水は流れだし、ヴィシュヌは施し物を手に入れて、地から天まで三足で飛び上がり、
シュクラは片目となってしまいました。
この、ヴィシュヌの三段飛びは、太陽の出と、南中と、入りを表わすものとされ、
また三つ星をこの時の足跡とも伝えています。
インドの星占いでは、金星の下に生まれた者は、過去、現在、未来の三世にわたる
自分の運命が見通され、すぐれた妻を持ち、象や馬や、乗り物や、りっぱな天蓋に
めぐまれると信じられていました。
中国では、金星が最大光度の前後、昼の空にも見られるのを、「大白昼見る」といって、
兵乱が起る兆として嫌っていました。