2000年9月のお話

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王妃と白鳥(ギリシャ)「白鳥座」
 夏の天頂に、天の川にひたって、織女(こと座α)と 牽牛(わし座α)とをへだてている美しい十字形の星座です。 このために、南十字星(サザンクロス)に対し、 北十字星(ノザンクロス)とも呼ばれています。 日本には「十文字ぽし」という地方があります。 十字の縦の線を、天の川の流れの向きへ長くのばした鳥の首から尾、 横の線を川幅いっぱいにひろげた翼と見ます。 これは古代ユーフラテスの国々でも同じ見かたをしていて、 エジプトでは「めんどり」でした。 アラビアでも、「飛び行くわし」で、これに対して、 こと座を「落ちるわし」、わし座を「飛ぶはげたか」と呼んで、 ここの夜の空を大海に見立てて、三羽の大鳥をとばせたのでしょう。
 ギリシャ神話では、この白鳥は、大神ゼウスが、スパルタ王テュンダレウスの后 レダのもとへ通ったときの姿で、しばしば近世の画や彫刻の題材に取り上げられています。 ゼウスと関係したレダは、卵を生み、その一つからはカストルとボルックスの双子がかえり、 一つからは、トロイ戦争の原因起りとなった美女、へレーネがかえったと伝えられています。 しかし他の神話では、楽人オルフェゥスが、妻エウリディケを冥土に追って行きましたが、 ついにつれて帰ることができず、その後トラキアで酒神祭の女たちに 八つ裂きにされて、ヘブルース川へ投げこまれたときに白鳥とかわり、 それが空へ上げられてこの星座となり、その琴(こと座)と並んでいるものともいわれています。 また他の神話では、父アポロンの日輪の車を走らせ、操作を誤ってエリダヌス川に落ちて死んだ フェートーンのなきがらを、その友キクヌスが、幾たびか川へ潜ってさがしました。 それが神々の怒りにふれて白鳥にかえられたとも伝えられています。 中国では、白鳥の翼の部分をむすんで、天津と呼んだ。天の川の渡船場のことです。  この星座のアルファは、十字の頭、白鳥では尾にあたる一等星で、 アラビア名のデネブは、「めんどりの尾」を表しています。 光度1.3等、距離約600光年、白色をおぴた輝きをしています。 アルファに対し、くちばしにあたる3等星ベータをアルビレオ(くちばし)といいます。 小望遠鏡には、オレンジ色の主星にエメラルド色の5等星をともなう二重星で、 その美しさは正に「天上の宝玉」といえるでしょう。 また、この部分の天の川には、十字のたての線にそって俗に「石炭ぶくろ(コールサック)」と呼ぶ うす黒い裂け目があります。 実は銀河面を覆うガス状星雲で、それが天の川の輝きと対照的な美しさをだしています。
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