2000年7月のお話

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うおつり星・午の星(日本)「さそり座」
さそり座の星のつづる雄大なS字形は、ボリネシアでは神人マウイが ニュージーランドの北島を釣りり上げた釣針が、天に引っかかったものと伝えられています。 日本にはこの種の伝説はありませんが、広島・愛媛・石川地方では、同じく釣針と見て 「魚つり星」といい、広島県安芸郡に、    天の魚釣り星、一ぴき釣ったら腹をあげ、    塩をこめ、腰のびくへちょっと入れ、    ・・・・・・・ という俚謡があるといいます。 更に山口・広島には、「たいつり星」の名があり、自然に恵比須さまが思い浮かびます。
 さそり座の主星アンタレスは異常に赤い色で、すぐに見つかります。 天明時代の辞書?には、「ヲヤニナイポシ」・「大火」と仮名が振ってあり、 今でも長野・群馬・静岡などで、お年寄りのかたは「あかぼし」と呼ぶようです。 全天第一の青い星、大いぬ座のシリウスを「あおぼし」というに対して、 ごく自然の名前ですね。静岡地方の「ひぼし」も火の色をいったもので、 大分の「酒酔い星」や福岡の「酒買い星」も、酒に酔った赤い顔にたとえた方言です。 岐阜・香川・佐賀地方でいう「豊年星」は、この星が赤く見える年ほど農年であるといいます。 筑紫地方でこの星を収穫の神さまとみて、秋には収穫が重くなるので、 神さまの顔はますます赤くなると言い伝えられています。 アンタレスは、その不気味な色から各国とも不吉の星となっていました。 一方、陰陽道では、この星を天王と見ていたので、時に月に隠れる星食現象を兵乱の兆として、 例えほ天草の乱や、由井・丸橋の慶安の変もこの天文に結びつけていたようです。  また、アンタレスは夏の間、午(南)の方角に見えるため、北極星の「子の星」に対し 「午(うま)の星」と呼ばれることもあります。 沖縄ではウンマノフシといっていました。 沖永良部島昔話にこのようなものがあります。   「島コーダ、島テーシが永良部の国を建てた。    潮を干かせ、白石黒石を置いて島を安定させて国を建てたのだが、人がいない。    そこで太陽の神にお願いしたら子の星と午の星を隆して下された。    子ノ星はエケリ(姉妹に対する兄弟)、午ノ星はウナリ(兄弟に対する姉妹)である。    その二人の息で子供ができた。」 糸満のある漁夫は、   「ネノフシは動かぬが、ウンマノフシは一晩に三尺から六尺動く。    秋に出て、色は赤い」 云々と云われたそうです。きっとアンタレスのことでしょう。
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