1999年10月のお話

StarStoryへ
天を翔る馬(ギリシャ) 「ペガサス座」
 「ベガサス」は天馬の名前で、その形は四角形を雲の中から現われている胴体とみて、 西側のα(アルファ)からのびている星の列を三角形の首、β(ベータ)につらなる星の列を、 折れまがった前脚と見るもので、馬は逆さまに天を走っている姿になっています。 この羽のはえた天馬は、古くバビロニアの彫刻に見ることができ、 ギリシャではそれを伝えたものと考えられています。 このペガサスの四角形は、内部に小さな星をわずかに数えるに事しかできませんので、 まるで空を四角に切り抜いたような感じになり、たやすく見つけられます。  ギリシャ神話では、王子ベルセウスが女怪メドゥーサの首を切ったとき、 その血が岩にしみ入ると飛び出した天馬べガサスだと伝えています。 女神アテナがこれを飼いならし、後にへりコン山に住む音楽の女神たち(ムーサイ)に与えました。 天馬ペガサスは好んでビレーネの泉に来て、その水を飲んでいました。  コリントの若い王子べレロフォーンは、父の死後、ティリンスの王プレートスのもとへ 行っていましたが、王妃が心をよせるようになり、王は王子を快く思っていなかったようです。 そこへ王の義弟ルキア王イオバーテスが、国のわざわいとなっている怪物キメラを 退治する勇士を求めてやってきました。 キメラは首がしし、胴は山羊、尾はうわばみ、口から火を吐く恐しいけだもので、 その火炎で森や畑や、村々までをも焼きはらい、人間や家畜を生きながら呑んで、 腹の中で焼いて食べていました。 プレートスは、ベレロフォーンにキメラ退治をすすめて、イオバーテス王のもとへ送り、 手紙には、この若者を殺してくれと書きそえました。 べレロフォーンは出発する前、予言者ボリュィドスから、キメラ退治には、 天馬べガサスに乗って行けと教えられていました。 そして、アテナの神殿にこもって祈ると、女神が夢に現われて、天馬の好む金のくつわをさずけてくれ、 なお、ビレーネの泉に行って待つがよいと教えられました。 そしてそのとおりにしていると、天馬は銀いろのっぽさをひろげて空からまい降りてきて、 泉のそばへよってきました。 そして、ベレロフォーンが近づいて、金のくつわをはめると、おとなしくその背に乗せ、 キメラの住む谷間へ運んで行きました。 そこで、ベレロフォーンは、弓に矢をつがえて怪物を狙い、十本の矢でようやくそれを倒して、 ししの首と、うわばみの尾を切り取り、再び天馬に乗って、ルキアへ帰りました。 王は臣下たちに、ベレロフォ-ンを殺させようとしましたが、一人のこらず殺されてしまったので、 しかたなく自分の娘を彼の元にお嫁にいかせ、後継ぎとしました。 その後、ベレロフォーンは、自分の武勇を自慢しすぎて、オリンポスの神々から見はなされましたが、 それにも懲りず、天馬をとばせて、天に昇ろうとしました。 そこで、大神は「あぶ」を放って天馬を刺させました。 「あぶ」に刺された天馬は驚いて、ベレロフオーンをふり落し、そのまま空にかけ上りました。 そして、星座に加えられたということです。 大地に落ちたべレロフォーンは、目も耳も不自由になり、みじめな最後をとげたということです。
 他の星座神話では、ベガスス座がアンドロメダ座ととなり合っているため、 ベルセウス王子がメドゥーサを退治してから、これに乗って空をとび、 アンドロメダが海の怪物に食べられようとするのを、海面近く下りて来て、 王女を救ったということになっています。  中国では、この大方形の二辺を東西にわけて、室宿と壁宿と呼んでいます。 日本では「ますがたぼし」で、これにつらなるアンドロメダの星の一列を「斗かきぽし」と呼んでいました。
StarStoryへ