1999年6月のお話

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北極星の精・地球の軸のはまっている穴「こぐま座・北極星」
小さい斗 これは北極星をふくむ星座として有名です。 北極星を柄のはしとして、六つの星が、北斗七星を小さくしたひしゃくの形にならんでいます。 もっとも、ふだんは北極星(2等星)と、ますのヘリの2つの星(2等と3等)だけが 目につくだけで、よく晴れた月のない晩でないと、七つそろった形は見えないでしょう。 しかし、日本でもこれを、「小びしゃく」または「小北斗」と呼び、 天文でも大ぐま座に対して小ぐま座と呼んでいます。 また、北斗を「車」というに対して、これを「小さい車」と名づけている国も多く、 昔のバピロニアでも、マルギッダ・アンナ(小さい車)でした。 神話では、この小ぐまは、カリストの子アルカスが、熊となって空におかれたものとなっています。 エスキモーの人は、この七つ星を、病気の子供をだいている四人の男と呼んでいます。 北極星 北極星は光度2.1等、距離1000光年以上のずいぶんと遠い星です。 学名は小ぐま座のアルファで、別名でポラリス(極の星)と呼ばれています。 日本では、十ニ支で北の方角を子(ね)とするので、これを「子の星」または、 「北の一つ星」と呼んでいます。  中国では昔、北辰とも天皇大帝とも呼んでいたようです。 ここで注意すべきことは、この星はいつまでも北極星とはなっていないことなんです。 今では天の北極から1度(見かけの満月をほぼ2つはさめる角度)弱はなれていて、 それだけの半径で日に一回、極のまわりを廻っていますが、 西暦2102年には、0度28分まで近づいて、いっそう正北の方角を示すことになります。 しかし、その以後は、北極からだんだん遠ざかって、ついには北極星とは呼べない事になってしまいます。 これは過去にさかのぼっても同じことで、今の星(アルファ)が北極星の名で呼ばれるようになったのは、 約2000年前からのことででした。 この訳は、地球が月と太陽の引力で、少しずつですが首ふり運動をやっているからで、 一回の首ふりには25,800年かかり、この結果として地球の軸の延長は、 いわゆる天球の面に円をえがいて、その周囲に近い星が順々に北極星となっていきます。 この事から考えると、昔のギリシャや中国で、天の北極に仰いでいた星は、 今の北極星ではなかったという事が解ります。 それは今の小ぐま座のベータで、その以前には、りゆう座のアルファでした。
エジプトの大ピラミッドは、北の入口が当時の北極星に向いて作られていたといいますが、 それは、このりゅう座の星だったのです。 歴史によると、最も古く星を航海の目じるしに用いた国民はフェニキア人で、 それは小ぐま座の星でした。 しかし、当時のギリシャ人には、まだこの知識がなくて、 アルクトス(大ぐま)を北のしるべとしていたことは、ホメロスの詩にも出ています。 それを、フェニキア生まれの天文学者タレースが、小ぐま座の星を目じるしにすることを教えました。 そのため、ギリシャでは、小ぐまをフォイニケとも呼んでいた。 もっとも、ギリシャ人も小ぐま座の星を知らなかったのではなく、 これをキュノスーラ(犬の星)と呼んでいました。 なぜそんな名をつけていたか、何かいわれがあったのでしょうが、 今ではその説明がつけるのは困難になっています。  さて、アメリカ・インディアンは、北極星については、こんな伝説を語っています。  昔、アメリカ原住民の一群が遠い国まで狩に出かけて、 道にまよってしまつた。月がいくたびか満ちては欠け、満ちては欠けたが、 あてどもなくさまよい歩くばかりだった。 そこで、かしらは会議を開ぎ、神々に生けにえをささげて、 村の方角を教えてくれるように祈った。そして一同たき火のまわりで踊っていると、 どこともなく、一人の子供が現われた。目のきらきら光る子供で、 「おれは北の星の精だ。お前たちの村はここから遠い遠い北にある。 あとについて来るがいい」と、おごそかに云つた。 猟師たちは喜んで、子供のあとについて行くと、果して村にたどりついた。 そこで再び会議を開いて、その北の星を「いつも動かぬ星」と名づけることにきめた。 今までインディアンたちは、この名で呼んでいた。 そして、その猟師たちが死ぬと、空に昇って行って星となった。 それが、今でも北極星について廻っているという。 アラビア人は、北極星を「地球のじくのはまっている穴」と呼んでいます。 そして彼等の聖書のコーランに、 「神は、陸にても海にても、暗き夜のしるべとなるように、星々を与えたまえり」 とあるとおりに、星々を仰いで沙漠を旅し、大地にひれふして遠く聖都メッカを 礼拝するときには、まず北極星によって、その北の方角を探します。 また、北極星を見つめれは、目のいたみがなおるし、けがをした時にも、 それを北極星の光にさらすと治ると信じてられています。 おわりに、北極星の反対側にあるベータ(2等)、ガンマ(3等)の2星は、 北極星を守るように廻っているので「極の守衛」と呼ばれ、 日本でも、北斗七星が子の星(北極星)を取って食おうと廻っている内側で、 見張りをしている「番の星」と呼んでいます。 イタリアでは、この3つを結んだ三角形を「つの笛」と呼んで、 詩人ダンテも「神曲」の中にこれを歌っています。
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