1999年4月のお話

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うそつきカラス 「からす座」
 うみへび座の尾の近くにとまって、口ばしでつついている「からす」の星座です。 4つの2等星の描くあざやかな台形が、春の南の空に見えます。 アルファは4等星で、からすの目玉に当り、台形の右下にあります。 この星は、かつてはかなり明るかったと考えられています。 この星座にカラスの姿を見るのは難しいですが、ギリシャ以来この名で呼ばれています。  ローマの詩人オヴィディウスによると、 これは日の神アポロンの召使いで、羽が銀色に輝き、人間の言葉を喋る、賢いカラスでした。 ただ、ひどくお喋りで、嘘つきだったそうです。  アポロンは、国々をめぐっている間に、テッサリアの王女コロニスを妻として、 男の子アスクレピオスをもうけましたが、バルナッソスの神山へ帰ることになり、 毎朝カラスに、妻と子のようすを知らせるように命じました。 ある朝もカラスはアポロンのところへ飛んで行きましたが、道草をしてしまい遅くなったため、 口から出まかせに、「コロニスはもうほかの男に心をうつした」といってしまいました。 アポロンは、うっかりその嘘に乗せられて、急いでテッサリアへ行き、 木立のすきに見えた白衣の人影を、その男と思い一矢で射殺してしまいました。 しかし、近づいて見ると、それは自分を迎えに出ていた貞淑な妻コロニスでした。 アポロンはひどく嘆いて、カラスから人間の言葉をうばい、ただカァカァと鳴くばかりにさせ、 その銀の羽をも、みにくい黒い色にかえて、嘘つきの見せしめに星空にして天にさらしました。  他の神話では、このカラスは水くみに行かされた途中、いちじくの木の下で、 その実の熟すまで待っていて、帰りが遅くなった言い訳に 「ヒドラ(水蛇)にじやまされて来るのがおくれた」と、嘘をついたことになっています。(コップ座)
これは伝説ではありませんが、台形の上の一辺を東へ延長すると、 おとめ座のアルファ(スピカ)にとどきます。 そして、この台形は西洋の帆船の「スパンカー」という帆の形に似ているので、 英国の船乗りは、これを「スピカのスパンカー」と呼んでいたそうです。 日本でもこの台形を「帆かけ星」という地方があって、この見方はカラスよりも、 はるかに自然な感じがします。 中国の二十八宿では「しん宿」といい、台形を車の横木と見たところからきています。 アラビア地方では、これを沙漠で張る天幕の形と見て、 その語アル・キバをアルファの名としています。
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