1998年12月のお話

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美しく、悲しい星・・・すばる(プレアデス星団)
  冬の晴れた夜は、星がキラキラと輝いて、1年中で一番美しい時期になります。  今月は冬の代表的な星「プレアデス星団 すばる」のお話でも・・・。  プレアデス星団は、牡牛座にある散開星団M45の別の呼び名で、  日本では「すばる(昴)」と呼んで、清少納言の頃から美しい物の代表とされてきました。  すばる星を「ひょっこの群」と見る民族は、フランスのブー・シニェル、  ドイツのグリュク・へへンネを初め世界各地にあるようです。   これはタイの伝説です。   昔、ある処に、至って信心探い老夫婦が住んでいました。子供がないことだけが不幸で、  その代りに雛を飼ってかわいがっていました。  ある日の夕方、見すぼらしい旅人が、疲れた足どりも重く門口に立って、一夜の宿をお願いしました。  親切な老夫婦は、快く招き入れましたが、貧しいので何ももてなす方法がありませんでした。  それで旅人を寝かしてから、ふたりは相談して、不びんだが明朝鶏をつぶして、  おいしいカレー汁を作り、旅人を喜ばすことにきめました。  すると、この話をもれ聞いた母鶏は、七羽のひよこを集めて、  「あすの朝は、恩人ご夫婦がお客をもてなされるために、わたしはご用に立つことになった。  これは本望なのだから、お前たちは悲しまずに仲よく暮しておくれ。」  といいきかせました。しかし、ひよこたちは、ひどく泣き悲しみました。  明朝母鶏はつぶされ、間もなくカレー汁の大なべは「ぐずぐす」と煮えていました。  すると、七羽のひよこは一羽また一羽と、つぎつぎにカレーなべの中へ身を投げて、  母鶏と運命を共にしてしまいました。  旅僧は実は「仏陀」の仮りの姿だったので、老夫婦の親切を喜ばれ、  同時に七羽のびよこを空へあげて星とされました。  それがすばる星で、タイではダーオ・ルーク、ガイ(ひよこ星〉と呼んでいるそうです。  (浦和市蓮見武雄氏の報告による。)
  また、こんなお話も・・・。  オーストラリアの原住民は、「すばる」の昇るときを元日として「黒人たちに親切な星」と  いっています。そしてつぎのような伝説がありました。  むかし、七人の美しい娘が森の中を歩きまわって、ヤム芋をさがしましたが、  朝から夜までかかっても一本も見つかりません。  コッヵトゥー鳥が根をすっかり食べてしまったからです。  娘たちは、から手で帰っては、火くい鳥のシンガルになぐられるのをひどく恐れました。  それで、先祖の霊のバーメの名を呼んで、「助けてください」とお願いしました。  バーメは高い空から見下ろしていましたが、ふぴんに思って、娘の一人一人を星にしてやりました。  それで今でも紅いカレンビンル(アルデバランのこと)の近くにかたまって輝いている・・・と。   また、他の原住民は、地上の花がしぽむと、風にさそわれて天の花園へとんで行き、  そこで永久に美しく咲く。もし大地をとり巻いている空気がなくなれば、空は黒くなって、  そこに虹色の星の花が一はいに現われ、その中を七人の美しい娘たちの魂がさまよっているのが  見えるでしょう。それがすばる星ですと、いい伝えています。
  いかがです? 美しくも悲しいお話ではありませんか。  プレアデス星団自体の大きさもあるでしょうが、その中の1つの星にうっすらと星雲がかかっていて、  その光景が、星が泣いて潤んでいるように見えることから、こんなお話がたくさん生まれたのでしょう。  今月はコメントは無しにしておきます。
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