1998年11月のお話

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村人を守るために、星になった西春(カノープス)
  さて今月は、ちょっと時期が早いのですが、りゅうこつ座の1等星「カノープス」のお話でも・・・。  昔、房総半島(今の千葉県)の先端に小さな村がありました。  人々は漁をして細々と暮らしていましたが、毎年、冬になると海が突然しけて、村人が何人も死にました。  若いお坊さん西春は、このことを悲しんで、ある時、村人を集めて告げました。  「私は、生きたまま埋葬されて、仏になります。そして、星となってみなさんに天気を知らせましょう。  もし、南の空低く、私の星が現れたら、海がしける前触れですから、決して漁に出ては行けません。」  泣いて引きとめる村人達にそういい残すと、西春は、自ら地面に掘った穴の中に入り、  悲しむ村人に、天井を閉じさせました。  数日の間、穴からは、お経の声が響いてきましたが、やがてそれが聞こえなくなり、  そして南の空低く、明るい星が現れました。村人は西春が星になったことを悟りました。  西春の言葉どおり、その星が空に現れると、必ず海が荒れました。  西春の星が天気を教えてくれたので、村人達は安心して漁に出られるようになり、  それからは嵐で命を落とす人もいなくなったといいます。  人々はそれ以後、カノープスの事を「西春の星」とよんでいます。
りゅうこつ座のカノープスは12月1日頃だと、 午前2時位に南中しますが、 高度が低くよほど条件の良いときでないと、 その姿を観ることはできないでしょう。
  昔はこういったお坊様が相当いらっしゃったのでしょうね。  昔話しの中にこういったお話はいくつかあるようです。  現代社会の中にあって「命を捨てて」というのは少々無理がありますが、  「人のために何かをする」という行為は賞賛されることでしょう。  私もほんの少しばかりですが、仏教教典らしきものを読んだことがあります。  (教典といってもよくホテルなどに置いてある、仏陀という本ですが)  「人は生まれながらにして善人であり、他人のために良い行いをするということは、  仏の教えに添うものである。善行をなす者には、限りなき仏の加護があるであろう」  というような結論付けがしてあったように思います。  「良いことをするのが仏の教えに添うものである・・・・」  仏教というのは学問ではなく、実際に行動を起こす事っだったようです。  机の前に向かって教典を云々することも大切ですが、  西春のように損得抜きで、まず実際に行動を起こすことが大切なようです。   現代社会人にとって、難しい課題のようです。  少しでも西春の「心」に近づけるよう努力するとしましょう。
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