1998年8月のお話
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人の寿命は、南斗の仙人と北斗の仙人の話し合いで決まる?
  さてと、今月の星のお話ですが、夏真っ盛りということで、  射手座付近に目をやってみることにしましょう。  このあたりは、銀河系の中心方向があり、天の川が一段と濃くなっています。  星雲星団も多く観られ、夏の夕涼みの観望にはもってこいの場所でしょう。  射手座はギリシャ神話では、半人半馬の「ケンタウロス族」のケイローンだとされています。  結構有名な神話ですので皆さんご存じのことと思いますので、  今回は射手座の中にある「南斗六星」のお話をしましょう。  この「南斗六星」は、六つの星が北斗を小さくして伏せたような形を斗(ひしゃく)とみたので、  北斗七星に対し、南斗六星と呼んだそうです。  江戸時代にはこれを特に「なんじゃ」といっていたそうです。  西洋でもおなじ見方で、牛乳のクリームをすくう「乳さじ」(ミルクディッパー)と  呼んでいたそうです。   北斗七星は、もちろん大切な星ですが、南斗六星も太陽や月、及び諸惑星の通り道(黄道)に  あたるので、重んぜられて二十八宿の斗宿となっていました。   中国では、北斗は「死」をつかさどり、南斗は「寿命」をつかさどるとされていて、  人が生まれると、南斗の精が北斗の精と、何歳まで生きさせるか、  その寿命を定めて帳面に記しておくと、いわれていました。  それについて、中国の昔話にこんな話があります。
  魏の国に管輅(かんろ)という人があって、天文や人相を見る名人でした。  5月のある日、南陽の野を馬で行ったとき、ふと麦畑で働いていた子供を見て  「ふびんながら二十才までは生きられまい」とつぶやいた。  子供は趙顔といったが、これを聞いて、ひどく驚いて父に知らせた。  そこで親子共に、十里も管輅のあとを追って、  どうか命が延びられるように教えてくださいと嘆願しました。  管輅は初め、それは人間の力が及ばぬと断ったが、とりすがられて仕方なく、  「では、卯の日に行くから、上等の酒一樽と、しかの干し肉を用意しておくがよい」といった。  そして約束の日にやってきて、趙顔に  「お前はこの酒と肉を持って、麦畑の南のはしにある桑の大木のところへいくのじゃ。  すると、そこに二人の仙人がいて碁を打っていようから、そばから酒と肉をすすめなさい。  二人が気づいて、何を云おうと、決して口をきいてはならぬ。ただ、拝んでばかりいる事じゃ」  と教えました。   趙顔は、いわれた通り行ってみると、果たして二人の仙人がいて、碁に夢中でわき目もふらない。  それで無言のまま、そばから酒をついではすすめ、しかの肉をすすめた。  二人は石を打つ手があくと、杯をとり、肉を口に運んでいた。  やがて一局すむと、北側にいた仙人が初めて趙顔に気がついて、目を怒らせ、  「なぜ、こんなところに来ているのか」と、しかった。  趙顔はただ、ぺこぺこと頭を下げては拝んでいた。  すると、南側の仙人は  「仕方がない、ただで飲み食いしたのだから、何とかしてやらずばなるまい」といった。  北側の仙人は「この子の寿命は生まれる前から定まっている。  そのおきてを破るわけにはいくまい」と面をふくらせたが、  南の仙人は、「まあ、まあ、寿命帳を調べてみよう」といった。   それをめくって趙顔の名を見ると「十九歳」とあった。仙人は筆をとって、  「十九」をくるりとひっくり返して、「これで、おまえは九十歳まで生きるぞ」といった。  趙顔が大喜びでとんでかえり、管輅にその話をすると、うなずいて  「北側にいた仙人は北斗で、南側にいたのが南斗じゃ。南斗は生をつかさどり、北斗は死をつかさどる。  人が母親に宿るのはすべて、南斗が北斗に相談してのことじゃ」と説明した。  そして趙顔の父が、礼に絹布と金を出したのも受け取らずに立ち去ったということです。   日本にも人の寿命についての話はいろいろあり、  ロウソクの火にたとえることがよくあります。  中国では仙人が帳面に記帳して管理していたんですね。   ここでも、仙人(神様?)に願いをかなえてもらおうとすると、  先に何かをするという構図が現れているようです。  昔の中国の田舎町のことですから、上等の酒と、  しかの干し肉はけっこう高価な物だったのではないでしょうか。  我が子の命が関わったこととはいえ、大変だったと思います。   その昔テレビアニメの番組で「北斗の拳」というのがありましたが、  その中で「北斗七星」のひとつを  「死兆星」といっていたのを思い出します。  またテレビドラマ(なんという題名だったかは忘れましたが)で  外科手術をする前に「北斗七星」に手術の無事を祈り、  術後にお礼の祈りをするシーンのあるドラマがあったのを思い出しました。  以外と「北斗七星」が人の生死に関わる星だというのは知られているようです。  今ひとつハッキリしない天気ですが、夏の夕涼みがてら、銀河系の中心方向にみえる  「南斗六星」を探してみてはいかがでしょう?  くれぐれもお願いだけして、あとは知らんぷりなんてことのないように・・・・・。
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