1998年7月のお話
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夏の代表的星座 さそり座(アンタレス)の心のうちは・・・
  夏の星の話と言えば、さきほどの試験衛星ではありませんが「七夕伝説」ですね。  そして「七夕の星」といえば、「夏の大三角形」が有名ですが、何故か「さそり座」のお話・・・  ギリシア神話では、自分の力を自慢しすぎて、神々(特に大地の女神)の怒りふれたオリオンを  刺し殺した「サソリ」とされています。  ここでは宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」にでてくる少女の話を聞いてみましょう。   昔、バルドラの野原で小さな虫を食べて生きていたサソリが、  イタチに食べられそうになって逃げているうちに、井戸の中に落ちてしまうのです。  「その時サソリはこう言ってお祈りしたというの、   ああ、私は今まで幾つもの命をとったか解らない、  そしてその私が今度はイタチにとられようとしたときは、あんなにも一生懸命逃げた。  それでもとうとうこんなになってしまった。  ああ、なんにもあてにならない。  どうして私は私の体をだまってイタチにくれてやらなかったろう。  そしたらイタチも1日生き延びたろうに。  どうか神様。私の心をご覧ください。  こんなにもむなしく命を捨てず、どうかこの次にはまことのみんなの幸(さいわい)のために  私の体をお使いください。 って言ったというの。  そしたら、いつかサソリは自分の体が真っ赤な美しい火になって  燃えて夜の闇を照らしているのをみたって。」
 ・・・・・。 なんともうら悲しい話ではありませんか。  しかし、このサソリも自分が確実に死ぬと解ったとき、  今までの生き方にふと疑問を持ったんでしょうね、きっと。  自分が生きるために他の虫を食べてきた、  そして自分はというとイタチに食べられそうになると、  一生懸命に逃げて井戸の中に落ちて水の中で朽ちてしまう。  誰の役にも立たず・・・。  そして、次に生まれる時は「自分の体を他の幸せのために使って欲しい」と願う。  自分命を捨ててでも他の幸せの為にと願う。  そんな気持ちが天に通じたのか、「サソリ」は星座になって、あの真っ赤に燃えるような一等星、  アンタレスで暗い闇夜を照らしている。    ギリシア神話などでは、あまり良くない話が多い「アンタレス」ですが、  こうしてみると、どこか優しげにみえたりします。  人の世界でも同じ事がいえるのではないでしょうか?  自分のためではなく、人の為に一生懸命になるのはとても素晴らしい事だと思います。  今まで散々悪い事をしてきていても、今から、そう、たった今からでも自分以外の為に何かする  という事が、自分の人生を終える時、満足感を与える事に結びついていくのではないでしょうか。   自分の命の終わる寸前で、大切なことに気づいた「サソリ」にならないよう、  日々努力していくことにしましょう。
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