1998年4月のお話
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まごころの星(北斗七星)
  春になると中国から黄砂が飛んできて日本中は黄色くなってしまいます。  (だから黄色人種なのか・・・)  夜空の星も少しぼやけて見えるようですが、寒さも和らいできましたし、そろそろ観測や  写真撮影の回数が増える事でしょう。  しかし、冬眠から目覚めたクマはお腹がすいていますから、くれぐれもクマの餌にはならない  ようにしてください。   ということで今月はおおくま座(北斗七星)のお話・・・。  おおくま座の姿を星座絵でみると、クマにしては少し尻尾が長すぎるように思いませんか?  あれでは「クマ」というより「たぬき」という感じがします。  そういえば「あらいぐま」なんていう「クマ?」は尻尾が長かったようですから「尻尾の長いクマ」  がいてもいいのかもしれません・・・。 尻尾が長くなったのには色々と訳があるのですが、  有名な話でもありますので皆さんもご存じだろうと思います。   そこで今回は、おおくま座の中にある「北斗七星」のお話をする事にしましょう。
  昔むかしの帝政ロシアのある小さな村での出来事です・・。  大変な日照りが村を襲った事がありました。  ある日、村の女の子がひとりひしゃくを持ってさまよい歩いていました。  女の子の母親は病気で水を欲しがっていたのでしたが、どこにも水はありません。  女の子は疲れ果ててしまいとうとう道ばたに倒れてしまいました。  ふと気がつくと手に持ったひしゃくに水がいっぱい入っているではありませんか。  女の子は喜んで、もと来た道を引き返し始めました。  するとやせ細った子犬がよろよろと歩いてきました。   かわいそうに思った女の子ははひしゃくの水をほんの少しだけ分けてあげました。  するとひしゃくは「銀」に変わり、美しく輝き始めました。  女の子は一目散に家に帰りました。  「お母さん。お水よ!」  戻ってきた娘の持っているひしゃくを見て母親は驚きましたが、優しくいいました。  「かわいそうに、のどが渇いただろう。私なんかより、そのお水はおまえがお飲みなさい」  その時ひしゃくは「黄金」に変わったのです。  と、そこにみすぼらしい姿の老人が入ってきました。  「お水を一口飲ませてくださいませんか」  それを見た女の子の母親は  「気の毒に。 私の分をお年寄りにあげて、残りは、おまえがお飲みなさい」  といいました。母の言葉に従って、女の子が水を老人の前に差し出した時です。  ひしゃくから泉のように水が沸きだし、それとともに七つのダイヤモンドが飛び出してくると、  空に昇って星座になりました。  「あの七つの星は、あなた方の真心の星です。  あの星が夜空に輝く限り、あなた方の美しい行いは語り継がれる事でしょう」  村人達が思う存分水を飲んでもまだ水は溢れ続け、そして村は干ばつから救われたのでした。   帝政ロシアの頃という時代背景から考えると、このような話があっても不思議では無いような  気がしますが、この物語の母娘のように、本当は自分たちも困っているのですが、他の困っている  人のために、必要で手に入れた物でも与えてしまえる心というのがすばらしいと思いませんか?  小さいとはいえ娘が母親を思う気持ちや母親が娘を心配する気持ちは盲愛につながりがちですが、  他のすべての生き物に向けられたこの母娘の心というのは賞賛に値するのでは無いでしょうか。  今自分が困っているから人助けどころじゃないとか、自分さえよければとか、今がよければと  いった心が人間ですから多少なりとも働いてしまうのは仕方のないことでしょうが、  この母娘のように自分たちは後でも他のためにそれを絵空事ではなく実践に移せる優しさというか  強さが私たちには欠けているのではないでしょうか?  自分が苦しいから、その苦しみを他には与えるような事をしない。  そんな気持ちが私たちにも欲しいものです。  「そんな事は理想であって現実じゃない」といわれる人もあるでしょうが、  つい5〜60年前の日本では似たような光景があったように聞いているのですが・・・・。  たまには「北斗の拳」じゃなく、美しくも優しい「北斗七星」をイメージしながら、  おおくま座を眺めてみるのもいいんじゃないでしょうか?
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